生理検査Q&A 脳・神経検査講座 第1回“脳波検査 基礎編”
Q1: AV法について、もっと詳しく説明してほしい。
実際の検査に基づいて、どこの活性化した波形をAV法で打ち消すのか、文献を探してもAV法についてあまり詳しく書かれていないので。
   
Q2: Aavがどういうことを言っていたのか良く分かりませんでした。
すみませんがもう一度教えてください。A1+A2にすることをAavということですか。
   
Q3: AV法とSD法についてもう少し詳しく、同じ感度ではどのくらいの高さの差がありますか。
   
Q4: システムリファレンスとは具体的に何をするのですか、リファレンスがA1A2のみではだめなのですか、しかもなぜC3C4なのでしょうか。
多分よく解っていないようなので、今一度『モンタージュ計算例』あたりを説明してください。
   
Q5: 接地抵抗10Ωと100Ωでは記録上具体的にどう違うのですか。
『100Ωで同じアースとしてなぜ記録上悪くなるのでしょうか。』
   
Q6: 等電位接地とは、具体的に教えてください。
   
Q7: 静電誘導と漏れ電流が入っていると具体的にどの様な波形になりますか。
   
Q8: 電極を付けて、電極コードを結んでいますが、今ひとつ結んだ時と結んでいない時の差があまり感じられませんが、本当に違うのですか。
   
Q9: シールドルームを作る時の注意点、アドバイス等がありましたら教えて下さい。
シールドルームに個別の空調(エアコン)は付けることは出来ますか、全館空調だと今の季節、発汗などのアーチファクトがでることがあるので、、、、
   
Q10: 脳波を記録している時に、患者様はシールドルーム内にいて脳波計はシールドルーム外にある時、記録脳波に与える影響として人の動き、咳など波形がどう変化するのか。
シールドルーム外での注意することは何か、(とびらは閉めていると考えて)を教えて下さい。
   
Q11: エリアシングが入っていると思われる脳波を具体的に見せてください。
これが入っているとどうしてわかりますか。
   
Q12: A1電極側やA2電極側のみに交流障害が入る場合はどうしたら改善されますか。
   
Q13: 入れ歯を取る必要はありますか。
   
Q14: HICUTフィルターの質問。
たとえば60Hzのハムフィルターは60Hzのみを消す。でもHICUT 60Hzのフィルターは60Hz以上を消すのではなく70%に落とす、30Hzなら30Hzを70%に落とすと書いてありますが、どういう意味ですか。
   
Q15: アナログ紙媒体の脳波記録はとてもかさばって場所をとります。保管は何年程度されているものなのでしょうか。
(所見はカルテとともに5年は保管しています、打ち出し分の保管年数です)
   
Q16: アナログ式の脳波計を使っている所はありますか。
   
Q17: デジタル脳波計は何年使えますか。
   
Q18: デジタル脳波計の一番多い故障はどこですか。

















   
Q1: AV法について、もっと詳しく説明してほしい。
実際の検査に基づいて、どこの活性化した波形をAV法で打ち消すのか、文献を探してもAV法についてあまり詳しく書かれていないので。
A1: 平均電位基準導出法(average reference electrode:AV)について
実際に装着した探査電極の各々の電位を平均した電位を基準電極として用いる方法です。
図はアナログ脳波計での平均電位基準を作る方法です。(デジタル脳波計では各探査電極の電位を数学的に平均した電圧を用います。)

この方法を用いると、基準電極には探査電極の電位が平均されたものが入力され局在する異常波がより鑑別しやすくなります。
しかし、脳波の振幅が低下してしまう点。一つの探査電極に大きな電位が発生すると全チャネルに波及してしまうという欠点もあります。
   
Q2: Aavがどういうことを言っていたのか良く分かりませんでした。
すみませんがもう一度教えてください。A1+A2にすることをAavということですか。
A2: 両側耳朶を短絡 A1+A2、と両側耳朶の平均電位Aavを基準電極とする導出法。
心電図が混入した場合に用いると心電図の振幅が減少することは広く知られていますが、片方の耳朶に筋電図が混入した時にもこの方法が有効です。
反面、片側の側頭部に大きな異常波が出現すると、健常である筈の反対側に活性化の影響が現れてしまうことがあります。
デジタル脳波計では、両耳朶を電線で短絡してしまうと、両耳朶の電気的特性が同じになってしまうので、この状態で測定したデータはリフォーマットできなくなります。この場合、両耳朶の電位を数学的に平均した電位(Aav)を用います。
   
Q3: AV法とSD法についてもう少し詳しく、同じ感度ではどのくらいの高さの差がありますか。
A3: 下記の波形が同じ単極波形をAV、SDに変えた実測波形例です。
単極 AV SD
SDでは単極の半分くらいの振幅になっていますが、SD法では、局在した脳波の変化を明確に検出することができますが、重み付けなどの人為的要素が加わる点には充分留意して用いる必要があります。
   
Q4: システムリファレンスとは具体的に何をするのですか、リファレンスがA1A2のみではだめなのですか、しかもなぜC3C4なのでしょうか。
多分よく解っていないようなので、今一度『モンタージュ計算例』あたりを説明してください。
A4: かつてはF3F4を採用した時期もありましたが、現在はC3C4を採用しています。頭の中央部分で、しかも左右2点採用することでより安定して測定できる電極で、小児などの省略誘導でも採用されている事例が多かったとの事で選んだようです。A1A2の耳朶電極は接触抵抗が高い事と、頭の中心部分でないことで外したそうです。
■システムリファレンス Vref を基準として測定した各電極のデータをそれぞれ
(Fp1-Vref)、(Fp2-Vref)、… (A1-Vref)、(A2-Vref)とすると
■Fp1-A1 = (Fp1-Vref) - (A1-Vref) Vrefが消えるので Fp1-A1となる
同様に
■Fp1-F3 = (Fp1-Vref) - (F3-Vref)
この様にシステムリファレンスを採用することにより、測定後モンタージュを変更することが可能になりました。
   
Q5: 接地抵抗10Ωと100Ωでは記録上具体的にどう違うのですか。
『100Ωで同じアースとしてなぜ記録上悪くなるのでしょうか。』
A5: A種(第1種)接地工事とD種(第3種)接地工事の事を云われていると思います。
脳波を測定する際に、
周りの機器と同じ接地レベルでないと、レベル差によりノイズが混入する事があります。A種接地は避雷針用のアースですので、周りの他の機器と同じD種接地で脳波計をご使用ください。
   
Q6: 等電位接地とは、具体的に教えてください。
A6:

Q5と同じ説明になりますが、周りの機器と同じアースを使うことにより、機器間の接地レベルを同じにして、ノイズの混入を防ぎます。
   
Q7: 静電誘導と漏れ電流が入っていると具体的にどの様な波形になりますか。
A7: いずれもHUM(ハム)の混入です。
   
Q8: 電極を付けて、電極コードを結んでいますが、今ひとつ結んだ時と結んでいない時の差があまり感じられませんが、本当に違うのですか。
A8: 差動増幅器の特徴でG1G2入力に同じ信号(ノイズ)を入れると増幅せず、差のある信号を入れると増幅する、を利用しています。ノイズが多い環境では有効ですが、ノイズの少ないシールドルーム内などでは、接触抵抗を下げる事の方がよりノイズ対策になると思います。
   
Q9: シールドルームを作る時の注意点、アドバイス等がありましたら教えて下さい。シールドルームに個別の空調(エアコン)は付けることは出来ますか、全館空調だと今の季節、発汗などのアーチファクトがでることがあるので、、、、
A9: シールドルーム内にエアコンを取り付けると、シールドの意味が無くなります。
シールドルームの外にエアコンを付けてダクトなどで冷気をシールドルームに入れる方法が良いと思います。
   
Q10: 脳波を記録している時に、患者様はシールドルーム内にいて脳波計はシールドルーム外にある時、記録脳波に与える影響として人の動き、咳など波形がどう変化するのか。
シールドルーム外での注意することは何か、(とびらは閉めていると考えて)を教えて下さい。
A10: シールドルームの外にいる場合、音もある程度抑えられるため特に大きな音を出さなければ問題ないと思います。ただ注意していただきたいのは、患者様の安全です。
発作などが起きる場合も有りますし、ベッドから落ちる事も有り得ます。できればカメラなどで患者様の安全を確認できれば良いのですが。
   
Q11: エリアシングが入っていると思われる脳波を具体的に見せてください。
これが入っているとどうしてわかりますか。
A11: サンプリングレートを選択した時点で、脳波計がHICUTを決めてしまいます。
このためエリアシングノイズの入った波形は手元に有りません、200Hzサンプリングで測定した脳波データを再生させると、HICUTが最大60Hzまでしか選択できなくなっている波形ならあります。


再生時に60Hzまでしか表示されないデータ。200Hzサンプリングと推測できます。
   
Q12: A1電極側やA2電極側のみに交流障害が入る場合はどうしたら改善されますか。
A12: 額や耳朶など陽の当たる部位は髪の毛のある部位より、接触抵抗が高くなります。
スキンピュアーを電極装着部に塗り、これを軽く拭取るようにして(ゴシゴシ擦ると痛い)接触抵抗を10KΩ程度に下げてください。
接触抵抗でなければ、ベッドが壁に近く、壁のなかにAC電源ラインがあり交流障害を起こさせている可能性もありますが。
   
Q13: 入れ歯を取る必要はありますか。
A13: ノイズの原因になっていなければ外していただく必要は有りませんが、原因になる場合もありますのでご注意ください。
   
Q14: HICUTフィルターの質問。
たとえば60Hzのハムフィルターは60Hzのみを消す。でもHICUT 60Hzのフィルターは60Hz以上を消すのではなく70%に落とす、30Hzなら30Hzを70%に落とすと書いてありますが、どういう意味ですか。
A14: 信号のもつ高い周波数成分を減衰させるフィルタを高域遮断フィルタ(Hi-cutフィルタ)と呼びます。
アナログフィルタの高域遮断フィルタは図のように抵抗器(R)とコンデンサ(C)を接続した回路で表されます。
コンデンサは2枚の金属板を平行に対面させて作った部品で、電子を蓄える性質を持っています。



コンデンサの抵抗は周波数fに依存し、交流抵抗Zcは次の式で表されます。
Zc =

周波数が高くなると抵抗が小さくなります。つまりコンデンサは高い周波数成分を良く通す性質があります。図の回路において、出力はRとZcにより分割されているので、高い周波数では出力が小さくなり、高い周波数成分が遮断され図のような特性が得られます。
ZcとRの値が等しくなる時の周波数を遮断周波数と呼び、この時の振幅値は平坦部の70%の大きさになります。遮断周波数fHは次の式で表されます。
fH = (Hz)

        ハムフィルタは交流障害(電源コンセントや電源ケーブルから発生する雑音)を取り除くためのフィルタで、ある特定の周波数(東では50Hz、西では60Hz)成分だけを減衰させます。交流障害が混入する場合、雑音を取り除くことができ便利なのですが、波形が歪んだり、アース線がはずれていても分からなかったりする場合があるのでできるかぎり使わないようにします。


図1-31 ハムフィルタの回路と特性
   
Q15: アナログ紙媒体の脳波記録はとてもかさばって場所をとります。保管は何年程度されているものなのでしょうか。
(所見はカルテとともに5年は保管しています、打ち出し分の保管年数です)
A15: 脳波記録紙につきましては何年保存しなければいけないという縛りは有りません。
最近では電子媒体でのデータ保存が認められているので、脳波記録紙を残さない施設が増えてきています。必要に応じて波形を参照(出力)できれば良いという事です。
   
Q16: アナログ式の脳波計を使っている所はありますか。
A16: まだまだ多数の施設でアナログ式脳波計を使用していただいています。
明確な調査では有りませんが、国内でおよそ5000台の脳波計が稼動しているとの調査報告があります。デジタル脳波計は3000台位と予測されます。
   
Q17: デジタル脳波計は何年使えますか。
A17: 脳波計には賞味期限のようなものは有りませんが、医療機器の耐用年で、脳波計は6年とされています。ただ電子カルテなど機器のシステム化が今後さらに進むと思います、このためシステム全体のパソコンのレベルを揃える必要性が出てきます。脳波計だけ極端に古いソフトではシステムとの連携が難しくなる事も有り得ます。
   
Q18: デジタル脳波計の一番多い故障はどこですか。
A18: 件数的にはペン周りのトラブルと思いますが、ペン周りはアナログ脳波計でも同じ事です。デジタル脳波計ではパソコン周りのトラブルが考えられます。
HDD(ハードディスク)、MOドライブ、DVD-RAM等のトラブルが考えられます。
保存データを速やかにバックアップしていただきます様お願い致します。